オリエントと地中海世界 第一章

5.シュメール人の都市国家

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この記事での主な内容。
・シュメール都市国家がどのように成立したのか
・ウル、ウルク、ラガシュ
・階級がどうやって発生したのか
・シュメール都市国家が衰退した理由

村から都市へ

灌漑農業の発達したメソポタミア南部では、都市文明が栄え、その富を求めて多くの民族が流入してきました。
前3500年ころから急激に人口が増え、神殿を中心に数多くの大村落が成立します。
やがて、交易の記録や統率者による人民の管理の為に文字が発明されます。

シュメール人が発明した楔形文字がその代表例です。

楔形文字

さらに、銅や青銅器などの金属器が普及し始め、前3000年頃には、神官・戦士・職人・商人などの数も増え始めます。
職業とともに人々の数も増え、大村落はやがて都市へと発展します。

神官・戦士・職人・商人が増加するというのは結構重要事項です。
なぜかと言うと、自ら食べ物を作らなくても生きていける人々が増えてきたということだからです。

現代日本では、米農家、野菜農家は少数派です。
つまり、自ら生産をしなくても生きていける人々が沢山いるということです。
当たり前に思うかも知れませんが、古代社会からすると劇的な変化なのです。

古代社会では、食べていくためには自給自足が原則でしたから、自分で食料を獲得する必要がありました。
これは、獲得経済から生産経済に移行しても同じことです。
自分達で食べる分の食料を自分たちで生産するのが当たり前です。

しかし、食料が豊富に生産できるようになってくると、そのうち余りが生じます。
余るわけですから、全員で生産活動をしなくても良くなるのです。

食料をもらう代わりに村を守る戦士や、道具を作る職人など職業を分化することが出来るようになります。
専門職に特化したほうが、より良い物が出来ますし、効率も良いからです。

この様に様々な職業の人が集まって都市が形成されていきます。

シュメール人都市国家

発展した都市は、神殿を中心とする都市国家を形成します。
代表的なものはウル・ウルク・ラガシュなどのシュメール人の都市国家です。
前2700年ころに形成されました。メソポタミア地方南部です。地図で確認しましょう。

south-mesopotamia

まずメソポタミア地方、と聞いたらこのあたりの地図が思い浮かぶと非常に良いです。
焦らなくても大丈夫。段々思い浮かぶようになります。

イラン、イラク近辺、ペルシャ湾近くにシュメール人都市国家は築かれました。

「ウル」はユーフラテス川下流域の右岸に、シュメール人が建設した都市国家です。
王墓からは、殉死者や黄金製の副葬品が発見されています。

似たような名前の「ウルク」はウルよりも上流にあります。
現在ではワルカと呼ばれる場所です。
これもシュメール人の都市国家で、円筒印章や文字が発見されました。

円筒印章はこれです。コロコロ転がすことで文字を写す仕組み。

円筒印章

主に所有者情報を記載していたようです。
パピルス(今でいう紙)が使われるようになると衰退します。
「ラガシュ」は更に北方で、これもシュメール人の都市国家です。

階級の発生

これらの都市国家では王が中心となり、神官・役人・戦士などが都市の神をまつるようになります。
彼らは、政治や経済の実権を握って人々を支配するようになりました。階級社会の誕生です。

現代日本は平等社会ですね。
誰が偉いとか、自分より階級が上の人には従わないといけないということはありません。

もちろん、会社や学校やチームなどは、その中でだけ適用される階級があります。
例えば、会社では部長より社長が決めたことが優先されるのは当然です。
でも、隣の家の人よりあなたが偉いとか偉くない、ということは無いはずです。

しかし、この時代は違いました。
生まれながらにして階級が決まっているので、極端に言えば死なない限り、その階級から解放されることは
ありません。

では、階級はどのように生まれたのでしょうか?

力が階級を生む

階級の上位職は、神官・戦士・役人などです。
彼らは権威を持っているのです。
権威というのは力そのものです。
戦士にとっての力は、そのまま力(パワー:武力)ですが、神官や役人は権威を力として使います。

神官には神の補佐役としての権威。
役人はさらにその補佐役としての権威です。

権威とは簡単に言うと、「みんながスゴイ」と思うことです。
例えば王様は、何がスゴイかよくわからないけど、王様だからスゴイわけです。

王様が言うことには皆が従わなければなりません。
みんながスゴイと思っているから、その王様に逆らうことは出来ません。

当然、本当に実力が伴った権威もあります。
世界的に有名な学者や研究者は、「世界的権威」と呼ばれることがあります。
彼らが発することは、他の学者や研究者がいうことよりも信頼度がかなり高くなります。

では、神官や役人はどうでしょうか?
神官や役人になるのは勉強が必要ではありますが、最初は言ったもん勝ちだったのではないかなと思います。
私は神の声が聴こえるのだ、と言えば「それはスゴイ」ということになるでしょう。

こういった職業が生まれた当初は、本当にそれが必要とされていたわけですから、インチキだなんてことはありません。
その職業についていた人々も、自分が他より偉い、という風には思っていなかったでしょう。

しかし、職業がだんだん固定化されていくと階級となります。
代々神官の家柄、とか、代々戦士の家柄、とか、何代も続いていると、なんとなくスゴイ気がして来ませんか?
人間は入れ替わってるのに権威は受け継がれるのです。

彼らは後々、自分たちの階級をさらに高めようとします。
例えば儀式を増やしたり、自分たちだけの特別な言葉を使ったりするのです。

儀式が出来る階級はスゴイ、特別な言葉を使える階級はスゴイ、となるわけです。
権威を高める為に、神秘化させたり、儀式を複雑化させる方法はよく使われる手法です。

そうそう、意外に思うかも知れませんが、イギリスは階級社会です。
イギリスは王政の国ですので王もいます。

貴族院という、代々受け継がれる国会議員の家柄もあります。
ただし、貴族だから何をしても許される、というようなことではありません。

ジッグラト

上位階級の人々は、ジッグラトと呼ばれる神殿で都市の神をまつります。
ジッグラトは聖塔とも呼ばれますが、実際は塔のような形ではありません。

Ziggurat

実際はこんな感じです。イメージする塔とは違いますね。

また、バベルの塔、というの言葉を聞いたことがあるかもしれません。
マンガやゲームでも良く出てきます。

このバベルの塔も、ジッグラトの一つです。
中にはごちゃまぜに覚えてしまっている人がいて、ジッグラトをバベルの塔と呼んでいたりしますが、これは違います。

バビロンにあるジッグラト限定で、バベルの塔です。
ジッグラトは各地にありますので、全部が全部バベルの塔ではありません。
バベルの塔の画像も貼っておきますね。

バベルの塔

ついでなので、バベルの塔の話をしようと思います。
本筋とは関係無いです。でもまとめない世界史なので。

バベルの塔

この言葉を聞いたことがある方も、話の内容までは知っているでしょうか?
なんとなくバベルの塔って聞いたことがある、という方が多いかと思います。
なぜならこのサイトに来ているということは、世界史が苦手なはずですから。多分。

ということで、バベルの塔とはなにか?

旧約聖書の物語

バベルの塔が登場するのは、旧約聖書です。つまり物語の一つということです。
旧約聖書はキリスト教、ユダヤ教の共通の正典です。

昔、人々は同じ言葉を使って暮らしていた。
人間は、次第に技術を進化させ、石の代わりにレンガを作り始め、しっくいの代わりにアスファルトを作り始めます。
この技術の進歩により、今まで作れなかった高さの塔を作れるようになったのです。

そして人々は、天まで届く程の高さの塔を立てて有名になろう、と考えました。

神はこれに怒ります。天まで届かせようなどとなんたる馬鹿者か、と。
そして、こんな愚かなことをする人間が心配でした。

そこで神は考えます。
同じ言葉を使うから、連携出来てしまうのではないか?
よし、では、言葉をバラバラにしてしまおう。

そして、バベルの塔に雷を落とし塔を破壊。
さらに人々は言葉が通じなくなってしまい、世界中に散らばりました。

という話です。
塔を立てて有名なろう、という部分は現代世界も似たようなものですね。

いかがですか?聖書も読んでみると意外と普通の物語だと思います。
宗教、ということで毛嫌いしなくても良いと思いますよ。

現代のゲームとか漫画は、大体神話とか聖書あたりから話を持ってきているのも多いです。

ではバベルの塔の話はここまでです。
都市国家成立の話に戻りましょう。

文明の発展

各地に都市国家が成立すると、文明も発展します。
灌漑の技術に必要な、暦(こよみ)を知る技術も発達し、太陰暦・占星術・六十進法も生まれます。

六十進法は現代でも使われています。どこで使われているかわかりますか?
実は時計が60進法です。◯◯進法というのはその数字で繰り上がるという意味です。
時計は60分で繰り上がります。11時59分の次は12時です。間違っても11時60分とは言いません。

何気なく使っている時計ですが、60で区切りをつけるというのは良く良く考えれば中途半端です。
実は、この時代からの名残りなのです。

ちなみに、私達が計算で良く使うのは十進法です。
9の次は1と0で10。0がまた9まで進むと、2と0で20なりますね。

戦争の始まり

文明が発展してくると、そこに競争が生まれます。
競争は戦争へと発展し、優勢な国には莫大な富が集まります。

壮大な宮殿・神殿・王墓が作られ、豪華なシュメール文化が栄えるのですが、戦争は国の力を弱めます。
勝てば大丈夫と思うかも知れませんが、勝っても国力は一時的に落ちます。
ローマは勝ち続けたのに衰退してしまいました。

それでは、なぜ戦争が起きると国の力が弱くなるのでしょうか?

戦争をするためには、戦士が必要だからです。当たり前ですが。
戦士がいるということは、それを支える食料が必要となります。

戦士だけが戦っている状態ならまだいいのですが、農民が駆り出されると食料を生産するものがいなくなります。
食料を生産するものが居なければ食べ物がなくなります。食料がなければ戦えなくなります。

つまり、戦っている間生産力が落ちるのです。さらに消費量も増えます。
仮に勝ったとしても、食料を生産しなかった土地は荒れ果て、農民が戦争で死んでしまっていれば、その土地を耕す者がいなくなり、生産力が落ちます。

人が多く暮らすためには食料が必要なのに、この食料が無くなるわけですから、当然都市は衰退します。

そもそも、都市はどのようにして出来たのか?を考えてみるとわかります。
まとめない世界史を最初から読んでいる方にはピンと来ると思いますが、食料があるからこそ人々が定住し、定住するからこそ職業が分化し、技術も発展するのです。

食料が無くなる、ということはこの根本の部分が無くなる、ということなので、国力の低下どころか国の崩壊が起きてもおかしくありません。

食料や資源はいつの時代も戦争の種になりますので、覚えておいてください。
現代社会でも、エネルギーの元となる石油や生きるための水は争い事の種です。
特に日本は水資源が豊富ですが、この水資源は諸外国から結構狙われています。

シュメールの衰退

シュメール都市国家は絶え間ない戦争を繰り返し、衰退していきます。
この衰退したシュメールを前24世紀にセム語系のアッカド人が征服します。

アッカド人はセム語系のアッカド語を使用した民族で、バビロニア(南メソポタミア北部)から起こった都市国家です。
南メソポタミア北部、なのでウル・ウルクなどからもう少し北へ行った地域です。

シュメール人都市国家を次々に征服し、メソポタミア最初の統一国家を建設します。
王の名前はサルゴン。重要な人物ですが、実は詳細はまだよくわかっていません。

画像は、サルゴン一世と考えられているものです。
サルゴン1世

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