人種の分類
人類が環境に適応していくと、言語や習慣が色々と出てくるようになります。
肌の色や髪の色に身体的特徴の違いも出てきます。
これらの特徴を、白色人種(はくしょくじんしゅ)、黄色人種(おうしょくじんしゅ)、黒色人種(こくしょくじんしゅ)としたのが人種による分類です。
黄色人種の特色は、黄色または黄褐色の皮膚と、黒褐色系の瞳を持つこと。
黄色人種はモンゴロイドと呼ばれ、日本人はこの分類とされています。
白人は白色人種、コーカソイドと呼ばれますね。皮膚や目の虹彩(こうさい)が極めて薄い人々です。
黒人と呼ばれる人々は黒色人種、ネグロイドです。黒色系の肌と縮れた毛を持つ人々。
これが主な分類なのですが、この分類方法、非常に曖昧だと思いませんか?
肌の色なんて、住むところですぐ変化してしまいます。
日本人だけをみても、色白の人、地黒の人、瞳が茶色、黒色、髪の色が薄い、濃い、など色々な身体的特徴があります。
世界中を見渡せば、それこそ無数の特徴があります。
皮膚や目の色、頭髪で人種を区別しようなんて、あまりにも乱暴だと思いませんか?
いかにも科学的に分類されているようなこの考えは、現在は不正確とされています。
自然人類学者、遺伝学者は人種という概念を使いません。意味が無いからです。
人種の分類に科学的根拠は無い
人種という考え方は16世紀頃に生まれたとされています。
これを学説として世に出したのが、ドイツの医師ブルーメンバッハです(1752年~1840年)。
画像が小さいですが、これがブルーメンバッハ。
1755年に発表した論文によって提唱されました。頭蓋骨の比較研究などを基礎に分類したとされています。
しかし、この分類と定義の特徴はキリスト教とヨーロッパの伝統に強く影響を受けているのです。
18世紀のヨーロッパ社会は、キリスト教文化の伝統が強く残る時代でした。
平等な社会の実現、人民主権論などが沸き起こり、人間の解放を唱える啓蒙思想が出始めたころでもあります。
国や社会の考え方が大きく変化し、人々の生き方そのものも変化、近代化の始まりの時代です。
そんな中で、ヨーロッパの人々は自分たちが優れていると考えていたわけです。
そもそも、コーカソイド、という白色人種の呼び名からしてその思想を読み取れます。
ノアの箱舟がたどり着いたとされている、アララト山がある中央アジア地方の呼び名がコーカサスです。
ここはキリスト教の聖地なのです。
アララト山は、トルコの東端。アルメニアとの国境付近にあります。
右がアララト山。標高5,137m。この山にノアの方舟が到達したとされています。
さらに、白い色は善・黒い色は悪、という考えが聖書の記述にあります。
当時のヨーロッパ人は、自分達はノアの箱舟でアララト山にたどり着いた人々の子孫である。
コーカサス地方に住んでいた、善である白い人なのだ、という趣旨でコーカソイドとしたのです。
実際、ブルーメンバッハはこんなことを言います。
「コーカサス出身の白い肌の人々が最も美しく全ての人間集団の基本形であり、それ以外の人種はそこから退化したものである」。
黒色人種は白色人種より劣る、だから奴隷で当然、という考えのもと黒人奴隷が生まれたわけです。19世紀以降この考え方はさらに盛んになりますが、今日では科学的根拠は無いとされています。
いま聞くと酷い話だと思いますが、当時はこれが当然の考え方だったのです。
そして日本ではあまり感じませんが、現代においても、世界で差別は残っています。
民族と語族
一方で、言語・宗教・習慣などの文化的特徴で人類を民族という集団に分ける考え方があります。
この考え方も歴史過程で形成される面が強く、固定的なものではありません。
民族集団は時代とともに変化する、ということです。
さらに、語族という考え方もあります。
この考え方は、言葉は違っても元をたどれば同じ言語から発達した集団を指します。
例えば、インド=ヨーロッパ語族やアフロ=アジア語族などがこれにあたります。
英語やフランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語などは、インド=ヨーロッパ語族です。
アラビア語はアフロ=アジア語族にあたります。世界の言語地図がこれです。
では、日本語は何語族にあたると思いますか?
実は、未だにわかっていません。系統関係が不明な孤立言語とされています。
これだけ科学が発達しても、未だに日本語がどこの系統なのか、というのはわからないままなのです。
世の中わからないことだらけです。
アルタイ語族に分類される、というのが一番有力ではあるのですが、結論はまだ出ていません。